2011年12月7日水曜日

生命の息吹を感じることの大切さ~『野草手紙』を読みながら~

12月16日キャンドルナイトのゲスト ファン・デグォン氏の『野草手紙』を読んでいます。
「日本語版によせて」という文章に素敵な言葉があるので、少し長いですが引用します。

「本書が韓国でベストセラーとなるや、多くの人々が異口同音に口にした言葉がある。

「生命の息吹など感じられない刑務所のなかで、どうしてこのような本が誕生したのだろう?」

逆説的だが、生命という概念からかけ離れた刑務所であったからこそ、この本は生まれたのだ。わたしたちは、常に充分な空気に包まれて呼吸しながら生きているが、空気のありがたさなど気にも留めない。同じように、生命の光に満ちた外の社会で暮らしていると、かえって命のありがたさに鈍感になってしまう。せいぜい、ある動物の肉やエキスは滋養強壮になるだとか、この草花は生け花にいいだとか、自分たち人間にとって役に立つかどうかで判断しているにすぎない。これでは、命ある動植物が、生命体どころか人間の快楽のための道具として扱われているも同然だ。わたしは、運よくも、いかにも役に立ちそうな生命体など存在しない、コンクリートに閉ざされた独房のなかで、長い歳月を過ごしてきた。おかげで、そこで出会った無数の「しがない命」を通じて、逆に、生命の尊さに触れることができた。」『野草手紙』NHK出版10頁~11頁

この本は、刑務所から妹へと宛てた書簡集です。その一言ひとことに、寄り添いながら読ませていただくことで、生命の息吹を感じさせてくれます。ファンさんがどうして収監されたのか基本的な情報はナマケモノ倶楽部のサイトに詳しいです。

http://www.sloth.gr.jp/events/hwang/

聞思堂ワークショップでも、生命の息吹を感じました。土壁に、ストローベイルに、仕事をされている皆さんの姿に・・・。

単なる健康にいいからという役に立つかどうかという人間の視点だけでは、感じることができないのだと思います。「自然素材とつきあう・・・」大切さを思います。土の壁は雨に弱いのです。そのことで、批判的な意見もたくさんあります。そこに、問われているのは、生命観であり、生き方なのです。ファンさんは、刑務所という環境のなかで、生き方そのものを変革していかれました。

コンクリートに閉ざされた状況は、まさに私たちの一つの価値観に閉ざされたライフスタイルになぞらえることができるのではないでしょうか。経済発展を至上とする社会の価値観・・・。そんな牢獄だからこそ、ファンさんの生き方の変革に学ぶことが多くあるのだと思います。


茶室の入口に土壁が塗られました。
やはり土に囲まれた部屋の素晴らしさを感じます。生命の息吹を感じる部屋の在りかただと思います。ここは、一輪の花や、お茶の香りや、人とひとの一期一会の出会いを大切にする部屋です。
そう思うと、やはり深い生命平和の文化が茶室には生きているのだと思います。

みなさんもぜひ、ファン・デグォンさんに会いに来てください。

2011冬至キャンドルナイトに是非
http://zenryouji.blogspot.com/2011/12/blog-post_05.html